「ビルディング」と「ビルヂング」の考証

建物名称に正式にビルディングを用いたのは「東京海上ビルディング」とされてます。
1928年(大正7年)に竣工した白亜の地上7階建ての壮麗な建物で、東京駅の延床面積に匹敵するものだったそうです。
三菱合資会社を退職した曾禰達蔵とケンブリッジ大学で建築学を学んだ中條精一郎が主宰した曾禰中條建築事務所が設計監督をした、日本人が設計・施工した初めての本格的事務所建設であり、初めてビルディングが名称として用いられたとされてます。




東京海上日動火災保険株式会社HPより(1918年撮影)


尚、ビルと省略されたのは5年後の1933年に竣工した「丸の内ビルヂィング」通称「丸ビル」だそうです。
「丸ビル」以降、三菱合資会社が建設するビルはビルヂングが基本となったようです。

オフィスビル経営者による唯一の全国団体である一般社団法人 日本ビルヂング協会連合会は、1930年(昭和5年)にビルヂング茶話会として発足してます。
三菱主導で発足したので、ビルヂングを用いているのでしょう。
1923年に竣工した大手町の「永楽ビルディング」(安田保善社)、1926年に竣工した大阪北浜の「住友ビルディング」(住友合資会社)、1931年に竣工した大阪北浜の「大阪安田ビルディング」(東京建物)といった具合に、ビルヂングを使用しないビルも多かったと思います。
とても面白いのは、大阪中之島の「大阪ビルヂング」です。大阪商船・宇治川電気会社・日本電力会社の3社によって大阪ビルヂング会社(現・ダイビル)が設立され、1925年(大正14年)に竣工した「大阪ビルヂング」は「大阪商船ビルディング」とも呼ばれていたそうです。
「ビルヂング」と「ビルディング」が共存していて、とても興味深いですが、当時の人々は後世にこんなことに拘る変人がいるとは思ってもみなかったことでしょう。




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